雪であたたまる想い

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「今夜は平野部でも雪が降るでしょう。お出かけの際は、足下に気をつけて、今後の天気予報と公共交通機関の運行状況をご確認ください」 朝の支度をしていると、付けっぱなしのテレビからそんなニュースが流れてくる。 んー、ま、降るって言っても、どうせちらちらっと舞って終わりでしょ。 ん、でも、寒いし、今日はブーツで行こう! そんなことを思って、その日のコーデを決める。 今日は金曜日。 1日頑張れば、明日はお休み。 私は、自分を励ましながら、出勤する。 午後4時過ぎ。 窓の外には、天気予報の通り雪が舞い始めた。 「会議室にこもって作業してきます」 私は、誰に言うともなく、周りの席の人に声を掛けると、大量の資料を持って会議室に向かう。 会議室の広い机にたくさんの資料を並べて、黙々と作業をする。 ふと気づくと、夜7時。 「もうこんな時間なんだ。続きは来週にして帰ろうかな」 私は、片付けた資料を抱えて、会議室を出る。 えっ? ドアを開けると、オフィス内は、薄ぼんやりと常夜灯が(とも)るのみ。 なんで? 会議室に私がいることを忘れてしまったのは仕方ない。 けれど、いつもなら、この時間、まだまだたくさんの人が残業をしているのに。 ふと、窓の外を見ると、外の明るいネオンに照らされて、こんこんと降りしきるたくさんの雪が目に入った。 えっ、雪ってちらつくだけじゃないの? 私は驚いて窓に駆け寄る。 6階の窓から見下ろすと、すでに歩道はもちろん、車道にまで雪が積もり始めている。 うそっ! 私は、慌ててスマホを取り出し、ニュースを確認する。 電車はほぼ全て運休。 振り替え輸送のバスは長蛇の列。 タクシー乗り場も2時間待ち。 もしかしたら、3時間かも。 どうしよう。 これじゃ、帰れない。 だから、みんな、さっさと定時で帰っちゃったのか。 会議室には窓がないから、気づかなかった。 途方に暮れた私は、抱えたファイルをぎゅっと抱きしめた。
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