第五章

24/42
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
 切り結んだ。何度も、何度も。大仰に宙を舞い、何よりも苛烈に、刃を叩きつけ切っ先を放った。  気づけば、尖塔の頂上付近。丸い円卓のような建築、その屋根の上。  「……」  「ああ、楽しいなぁ。永遠に続かないかな、これ」  二人、人の形をした怪物が佇む。互いに、致命傷以外の傷に覆われ、息を切らしながらも流れる血を拭いもしない。  意味がないからだ。どうせまた傷も増える。なにより、そんな隙を見せることが出来る状況じゃない。  一撃一撃が命に手を掛けている。全ての攻撃こそは必殺の一刀であり、致命する反撃を牽制する布石。ただの所作も何気ない仕草も、相手の命をさらけ出すための囮にすぎず。  結果、尖塔はあばら屋のごとき風体と化して、最後に残った無事な足場に行き着いた。ここが恐らく、決着の場。  その上で、栄次郎は素直に怖れている。目の前の、神童と呼んで差し支えない人斬りの才覚に。  あまりに短絡で、どこまでも一直線に殺すための剣筋。雑魚も手練れも関係なしに、ただ「斬って」「殺す」事のみに最先鋭化した、斬術の権化。  満身に満ちた剣才を、望外な修羅場で磨き上げたような。そんなひとつの芸術品が、目の前で少年のかたちをして立っている。こと人殺しという手管において、この少年は自分より数段も上の次元にいる。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!