カフェ・アイリス3 掲示板な午後

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 お勧め珈琲案は大好評で、ノルゲンと同じように掲示板には紙が降り積もっていた。よかったよかったと胸をなでおろし、けれどもこれだけ応募が増えると商品券は当たらないのだろうなと少し残念になる。  でも推しの喜ぶ姿が一番である。  そんなこんなでバレンタインデーは過ぎてしばらく経った頃、小さな異変が起こった。 「吉岡様、いらっしゃいませ」 「マスター、本日の珈琲お願いします」  そして本日の珈琲とは別に小さなチョコレートが4つほど入った小皿がついてきた。 「あの、これは」 「私も商店会員なので応募された詩を拝見したのです。そうしたら吉岡様のお名前がありまして」  その瞬間の衝撃と不覚感とジレンマと絶望と羞恥と驚天動地と動揺は筆舌に尽くしがたい。まさか、あれを、あれが、マスターの目に⁉︎ なんだと! もう駄目だ! 「このお店を気に入って頂けて本当に……吉岡様?」 「うがが……お店?」 「ええ。それにチョコレートもお好きなようで」  お店? お店? マスターではなく⁉︎  そういえば詩にダイレクトアタックはなかったはず。内心の大混乱がマスターの笑顔で癒やされる。大丈夫? 本当に? 「それでノルゲンのご亭主に伺ってテンパリングというものを教えていただきました。召し上がって頂けると幸いです」 「頂きますとも‼︎」  その艶めいたチョコは本当に美味しかった。本当に、色々な意味で涙が出た。心臓が止まると思った、本当に。  そして私が降り積もらせたポエムは結局商品券をもたらしたりはしなかったのである。 了 ac82ec27-37e2-4ffa-bed0-c233d5ef7f52 004a57f7-723e-47e5-8aec-b5dc0b2fcede
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