海の航海(コウカイ)

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海の航海(コウカイ)

海の航海(コウカイ)  ふらり立ち寄ったカフェに、精巧な作りの帆船が飾ってあった。帆をはためかせ今にも出帆しそうだ。  目が離せなくなり、じいっと眺めていると、帆船に吸い込まれて、クルクルシュルルル周りがかすみ、目が回る…。  気が付くと、到着していたのは真っ青な海。巨大になった帆船の甲板に乗っていた。  潮風が吹き、ほおに波の飛沫パシャッ!珍しくて船の甲板をウロウロし、船内も探検しようと木の扉を開けると、奥からシャーッ!とカーテンを開けて立っていたのは、サメの帽子を被ったまだあどけない顔の少年だ。 「えっ!あ、君の帆船?」 「そうだよ。ぼくの帆船にようこそ。珍しいな、オトナが乗ってくるなんて」 カーテン奥の部屋には、色んな動物たちが、くつろいで座っていた。 犬猫ウサギ、鳥々とコヨーテ、ライオンにシマウマもいる! 「これからサバンナまで、夢の中の迷いライオンやシマウマたちを、送りに行くところさ。君も行く?」 「えっ!」  ほんの少しだけ迷ったとたん、グルグルーサラサラサーッと砂にまみれ…。 気づくと、もう元のカフェに戻っていた。 「これだからオトナは…」 と遠くで空耳が聞こえた気がした。  帆船と海に心を残したまま、後悔がぼう然と立ち尽くしていた。  後悔(コウカイ)が降りつもり、これではいけない!と、気持ちを奮い立たす。        それからは、たくさん絵本や物語を読み、子どもたちと公園で遊び、心をやわらかくして、復活のための迷いのない感情を学んでいった。  そして、もう一度あのカフェへ…。  必ずあの帆船に乗り、少年船長に会って、サバンナへ出帆するために…。
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