嘘と告白

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「あれ? みんなは?」 「さあ。そのうちくるんじゃない?」 「しょうがねえな、どいつもこいつも遅刻かよ」 「あんただって遅刻でしょや」 「いや、そうだけど、俺より遅いってよっぽどだぞ?」 「自分で言う?」 「いいじゃん、一応二番目だし……お前は早いのな」 「お前って言うな」 「まだ言うのそれ」 「だって……」 「いや、悪い悪い。気をつけるよ」 「三年直さなかったくせに」 「いや、俺だって少しは大人になったんだって。人の嫌がることはしないように心がけるよそりゃ」 「大人て。小学生がおそわることでしょ」 「あはは」 「まったくもう……」 「でもさ、懐かしいな、このやり取り」 「……うん」 「会うのだって久しぶりだもんな。あんま変わってねえけど」 「お互い様」 「違えねえ。ていうか、もう春休みなの?」 「たまたまね、とってる授業の試験がみんな早く終わったから」 「そうか」 「あんたはまだあるの?」 「実は明日も」 「いいの、こんなとこ来てて」 「まあなんとかなるっしょ」 「留年なんかするなよ」 「大丈夫大丈夫……あれっ?」 「どしたの」 「さすがにみんな遅くねえか」 「あー……」 「ん? 何?」 「来ない」 「へ?」 「おかしいと思わなかった? あたしから連絡来るの」 「え、別に……だって、帰省するから久しぶりにみんなで会おうよ、って、普通じゃね?」 「グループじゃなくて個別でLINE来るのも?」 「あれ? そうだったっけ?」 「わざわざ平日指定してくるのも?」 「あー、いや、そりゃちょっと、平日かよ、とは思ったけど……」 「わざわざ今日この日なのも、全然意識しなかった?」 「え、今日この日、って、なんか……」 「……本気で言ってる?」 「いや、あー。うん、まあ、ちらっとは、それは考えないこともなかったというか、その日は予定ある奴もいるんじゃねーのかなーとは」 「で、あんたは予定なかったのね?」 「うるせーよ、ほっとけ」 「……はい」 「へ? これって……」 「もう、誰かからもらった?」 「あ、いや……えっと、その」 「本命だから」 「だってお前、今更」 「うん。ずっと言えなかった。言えないまま遠くに行った。だけどね。ずっと、変わらなかった。だから」 「あ、あの」 「好き。あの頃から、ずっと好きだった」 「お前、このために呼び出したの?」 「お前って言うな」 「いや、そうじゃなくて」 「だって……二人で会おうって言ってきてくれるかどうかわかんなかったから」 「いや、それでも来たとは思うけど……まさか、こんな」 「……また逃げる?」 「え、なに?」 「なんでもない。返事、急がないよ。テスト前なのに動揺させてたら、ごめん」 「いや、別に、いいけど」 「じゃ、あたしこれで」 「え……おい、ちょっと……おい、待てって!」 「離して」 「そう言われても」 「あのときと逆だ」 「え?」 「なんでもない……じゃあ何、返事してくれるの?」 「あー。えっと」 「なによ」 「いつまでいるの?」 「来月いっぱいくらいまで、ゆっくりするつもりだけど」 「そっか……じゃあさ」 「え?」 「デートする時間、たくさんあるな」 「えっ」 「とりあえず、一回目、行かない? 時間あけちゃった責任くらい取れよ」 「それって、どういう……」 「さ、行くぞ」 「ちょっと……ねえ、それOKってこと? そうなの?」 「返事いそがない、ってお前が言ったんじゃん」 「お前って言うな!」 「お前この後に及んで……」 「だから言うなって!」
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