4人が本棚に入れています
本棚に追加
さ:さしすせそのお約束
初めてエステル達に木剣を握らせた日。
得物をためつすがめつする子供達を前に、元グランディア王国傭兵テュアン・フリードは、朗々とした声で彼らに告げた。
「いいか、戦闘には料理と同じ、『さしすせそ』のお約束がある」
右手を掲げて、指折り数え上げてゆく。
「『刺す』『死を与える』『磨り潰す』『先手を取る』『そんな慈悲などくれてやらない』だ」
「……『磨り潰す』は流石に無いんじゃないのか?」
彼女の隣で、アルフレッドが眉間に皺を寄せ、額に手を当てて呻き。
「『そんな慈悲などくれてやらない』」
「エステル、その顔で言うな」
無邪気に翠の瞳を輝かせて反復するエステルの横で、クレテスが引きつった表情を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!