さ:さしすせそのお約束

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さ:さしすせそのお約束

 初めてエステル達に木剣を握らせた日。  得物をためつすがめつする子供達を前に、元グランディア王国傭兵テュアン・フリードは、朗々とした声で彼らに告げた。 「いいか、戦闘には料理と同じ、『さしすせそ』のお約束がある」  右手を掲げて、指折り数え上げてゆく。 「『刺す』『死を与える』『磨り潰す』『先手を取る』『そんな慈悲などくれてやらない』だ」 「……『磨り潰す』は流石に無いんじゃないのか?」  彼女の隣で、アルフレッドが眉間に皺を寄せ、額に手を当てて呻き。 「『そんな慈悲などくれてやらない』」 「エステル、その顔で言うな」  無邪気に翠の瞳を輝かせて反復するエステルの横で、クレテスが引きつった表情を見せた。
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