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ち:ちいさなしあわせ
アタシのダディは、アタシが小さい頃、天上に行きました。
ママとダディは、人間と魔族が、仲良く手を取り合って暮らしてゆけるように頑張ってました。人間の王国の人達と何度も何度も話をして、みんな仲良くすべきなんだって、皆に言って回ってました。
それをよく思わない連中がいたらしくて、ダディはそういう連中からママを守って死にました。
暗殺。あんまりよくわからないけど、とにかく物騒なかんじの言葉で、ダディの死は片付けられました。
賞賛されるべき勇気ある行動だとか。忌々しい裏切り者だとか。そもそもふたりは自分達の仲間じゃなかったとか。魔族の皆が言う事はバラバラで滅茶苦茶。だから、誰の言う事も信じてません。
アタシが信じるのは、ママとダディの言葉。
『わかり合えないと思っているから永遠に平行線なのよ』
それがママの口癖。アタシもそう思う。お互いの事をちゃんと見なかったら、いつまでも喧嘩してばっかりなんだと思います。
『小さな幸せがあれば、それでいい』
ダディは滅多に表情を動かさないひとだったけど、ママとアタシの前では、かすかに笑ってくれました。
『大変なのに、なんで笑ってられるの?』
アタシはダディに訊いた事がありました。
そうしたら、あのひとは、いつも以上に、すんごく嬉しそうに笑って。
『お前達がいて、幸せだからだ』
と、ぎゅうっとアタシを抱き締めてくれました。
だから、アタシも。
小さな幸せを、誰かに分けられる大人になりたいと思ってます。
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