上海狂詩曲

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  思い出すのは   目も眩むような蒸し暑い夏の夜に   底冷えのする盆地の冬の朝   むせ返るように咲きこぼれる桜と   視界を埋め尽くした錦の山と   ごうごうと音を立てて荒れる川    闇夜を一閃する 雷と   陽を弾く 一面の菜の花畑   無造作に踊る緻密な数式   手を伸ばせば届きそうなほどの星空      堅く絞られた麻縄のような躯   黒く真っ直ぐな髪と   そして闇夜より深く、尚くろい、ひとみと
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