ある意味宣戦布告

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ある意味宣戦布告

 それはある日のこと。  具体的に言うと2000年2月23日水曜日、午前10時半少し前のことでした。  我が家のリビングに寝転んでいた椎名(しいな)貴生(たかお)は、殺気をともなう気配を唐突に感じ、テレビから目を離して妻の顔をみた。 「ぜんぜん、わかってない」  由利香がいきなり、仁王立ちになっていた。 「タカさん、やっぱりぜんぜん解ってないよ」 「何がだよ」 「ワタシら主婦だって、毎日が戦いなのよ」  主婦いいなあ、とつい言ってしまった後の由利香の反応だった。 「いいなあ、主婦。毎日家事と子どもの世話っていう生活」  それだけだったら、むっとされるくらいで済んだのだろうが、なぜか更に口をついて 「オレも主夫しようかなぁ」  なんて言ってしまったから、たまらない。  ちょうどここ数年、大きなシゴトが重なり心身ともに疲れが増していた時ではあった。  双子のオムツを替えようと二人を並べてからにっこりしていた彼女をみて、寝転んだままついぽろりとこぼれた言葉だった。  しかし、その後の波紋の大きいこと。 「タカさんだって、お仕事タイヘンだとは思うけど、ワタシたちだって日々、家庭でがんばってんのよ。お掃除、お料理、お洗濯、小さい子どもの世話、幼稚園、買い物行くのにも赤ちゃんが二人……」 「ああ、悪かったよ」 「ぜんぜんそう思ってないでしょ」 「思ってるよ」 「いいえ、思ってない」 「思ってるって」 「じゃあ」  鼻から熱い炎を噴き出しながら、由利香が迫った。 「このお休み中、アナタ、主夫やって」
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