ホテルでピアノライブ

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ホテルでピアノライブ

7日、夜遅くに恭平さんから連絡があった。 「今やっと家に着いた。明日は会社に報告書提出で遅くなる。明後日なら会えるから、夜、開けておくよ。何時なら良いか、連絡してくれ」 「うん! 私も8日はアルバイトで遅くなりますから、9日なら夕方から何時でもOKです」 「じゃぁ、仕事早めに切り上げるから、丸の内北口まで来てくれるか? お土産もあるから楽しみにしていて!」 「はい! 丸の内北口のスタバにでも行って、コ―ヒ飲みながら待ってますから!きっと!」 やっと会える♪ 海外出張から戻って、家に着くなり直ぐに電話をくれたんだから、今までのモヤモヤは、きっと明後日で良い方に解決できる。そう信じていた。 8日、朝から学校でのヴィオラの練習に、夕方までマックのアルバイトに、6時からのホテルライブにと、大忙がしで衣装に楽譜と、たくさんの荷物を抱えて動き回っていた。 美恵に紹介してもらったホテルは、意外にも恭平の会社の近くの、丸の内にあった。 大きな門松に、蘭の花が惜しげもなく飾ってあるお洒落な高級ホテルで、ここで演奏できるなんて素敵♪ と、少し浮かれていた。 上品なレストランの、食事の合間のライブなので、控えめなネイビーのロングドレスにした。 お客様のお邪魔にならない曲で、ということなので、落ち着いた選曲にした。 リスト:愛の夢  シューマン:子供の情景  大好きなキャッツ CATSの Memory そして最後は ショパン:ノクターン これでいこう! 一回目の7時の回を難なく終えて、終わりのお辞儀をし、楽屋に戻ろうとした時、レストランの入り口に見覚えのあるシルエットが・・・ うそ! 恭平さんが迎えに来てくれた? 一瞬喜んだのも束の間。 その背後から、背の高い細めの女の人の影・・・・男の人の影が、女の人を支えて入ってくるように見える。 えっ? 違った? 違うよね・・・ 自分を納得させるように (違う人! 恭平さんじゃない!絶対違う!) と、繰り返し心の中で呟きながら、振り返らず楽屋へ戻った。 楽屋に戻っても、落ち着かずいつの間にか「アイスクリーム・アイスクリーム」と呟いていた。 8時二回目のライブ、食事の邪魔にならないように、そっとピアノの前に着く。 少し離れた席に、見慣れた大きな男の人の背中が・・・その前には、さっきの綺麗な大人の女性が薄っすら見えた。 集中! 集中! ちゃんとピアノ弾かなくちゃ、お客様に失礼になる。 そう思いながら、あの人は恭平さんじぁない!違う人! と、自分に言いきかせてピアノを弾き始めた。
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