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「……尚君と伊春の結婚は、いわゆる政略結婚というのが前提にあったけれど……なかなか誰にも心を開かない伊春に、誰か大切な人が出来ればいいなという願いも勝手ながらあったんだ。そういう相手なら……別に尚君じゃなくても良かったんだ」 「え……あ、はい……」 それは、まあ、そうだろうな。 政略結婚が家柄重視なのは当たり前だし……さすがに面と向かって言われると少し傷付くけどーーと思うと同時に、伊春のお父さんはこう続けた。 「でも、誰でもいいなんて思っていたのは最初だけで、すぐに尚君には特別なものを感じたよ」 「え……」 「あのお見合いの後ーーこれまで誰にも心を開かなかった伊春が、尚君と友達になれたってとても嬉しそうに言っていてね。その後も伊春は毎日、尚君の話ばかりで。伊春にとって尚君が大事な存在なのは明白だった。私と妻も、尚君にぜひ家族になってもらいたかった。だから……本当は婚約破棄も、したくなかった」 「え?」
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