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ーー…
その夜、伊春が「行きたい」と主張したのはーーファミレスだった。
「奢ってやるって言ってんのに。お前、俺の経済能力をそんなに舐めてんのか?」
メニューを開きながら、俺は伊春に軽く文句を伝えた。高級レストランは無理だとは確かに言ったが、なにもファミレスじゃなくたっていいのに。
「舐めてなんかいないよ。だってこのファミレスは……覚えてない?」
「……覚えてるよ。高校生の時、よく来たよな」
ここは、七年前の婚約中に二人でよく来ていた店。
あの頃、何を話したかは覚えていないが、それくらい、たわいもない色んな話をした。
課題やテスト勉強もしたな。伊春の方が頭が良かったから、勉強を教えてもらったりもした。
内装もメニューもガラッと変わっているが、本当に懐かしい。
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