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あの頃は、未来のことなんて何も考えずに一緒にいられた。
まだ子供だったから親の都合で引き離されたのも事実だけれど、あの頃の純粋な時間が今になってとても尊く思えて、つい泣きそうにしまった。
「何か、泣きそうだ」
いつものように穏やかに微笑みながら、伊春がそう言った。
「な、泣きそうになんかなってねーし!」
「え? 違う違う。僕が」
そう話す伊春の顔はやっぱり笑っていて、泣きそうなっているようには見えなかったーーでも、嘘を吐いているようにも見えなかった。
伊春は今、何を考えてる?何で、泣きそうだなんて言う?
……店を出たら、きちんと話さなければ。たとえ、伊春に喜んでもらえるような話ではなくてもーー。
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