seven

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俺がそう言うと、伊春はかざしていた右手をゆっくりと引っ込め、その手の平で自分の顔を覆う。 そして、小さな声でこう言った。 「いや、本当にちょっと待ってくれる……?」 「あ、ああ。ごめん、急にこんなこと言われても迷惑だろうなとは思ったんだけど……」 「ち、違う。そうじゃないんだ」 そう言って、伊春は顔を覆っていた右手をゆっくりとおろすと……真っ直ぐに俺を見つめる。 その表情(かお)は、まるで今にも泣き出しそうな表情(かお)。伊春のこんな表情(かお)、初めて見た。泣きそうになるほど、困らせてしまったのだろうか。 「伊春……?」 「……僕はてっきり、尚にフラれるとばかり思っていたから……かなり驚いた……」 「え? お、俺から振るのは有り得ないだろ」 「……僕から振るのも有り得ないよ」 すると伊春は、泣きそうな表情(かお)のままーーだけど嬉しそうに、微笑む。 そして……。 「僕も、これから先の未来もずっと尚と一緒にいたい。尚と結婚がしたい。だから……これからもよろしくね、尚。ーー愛してる」 「あ、愛って……! ま、まあ、俺も愛して……うん」 「え、何? 声が小さくて聞こえなかった。もう一度言って」 「きゅ、急に顔近付けんな! 調子に乗るんじゃ……っ、ん……」 文句を言い切る前に突然唇を重ねられる。 目を瞑る暇も、なかった。
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