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one
「じいちゃーん。こっちの空樽も全部運んじゃっていいんだよねー?」
額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら、庭先に向かってそう尋ねる。
縁側に腰掛けていた祖父は、穏やかな笑みを浮かべて俺の質問に答える。
「ああ。全部お願いしてもいいかい? 尚は力持ちで助かるよ」
「任せとけって。発情期が終わったばかりで元気も有り余ってるしな!」
祖父にそう答えてから、俺は空樽と空容器を持ち上げ、全て敷地内の倉庫へ運んだ。
ここは新潟県のとある酒屋、神岡商店。
元は俺の祖父母が経営していた店だが、数年前からは俺と俺の父が店を引き継いでいる。
酒屋の仕事は、仕入れや販売など多岐に渡るがーー俺は主に配達を担当していて、お客さんの自宅や飲食店などに商品を届ける仕事をしている。
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