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「はぁ……」
僕は思わずため息をついた。
疲れと落ち込みで肩を落とす。
原因は、週に三回通っている自動車教習所だ。
免許証を取得するため頑張っているのだが、僕には運転が向いていないようだ。
教習がどうしても上手く行かない。第一段階の、教習所内のコースを走るだけで緊張で手一杯だった。
何とか合格したが、次の第二段階の路上運転、これが本当に駄目。
路上に出て、相手側の車にぶつからないよう気を付けて、慎重かつ確実に、適切な速度で運転しなくてはならない。
物凄く神経を使う。こんなことを平然と行える人達が、僕と同じ人種とは思えなかった。
今日もなかなか上手く行かず、何度も教習所の先生にブレーキをかけさせてしまった。曲がり角をなかなか曲がれなかったり、車間距離を空けすぎたり、そのことを指摘されると慌てて、今度はぶつかりそうになってしまう等、冷静で的確な判断が出来なかった。
優しい先生なのではっきりとは言わないが、僕のあまりの運転の下手さに呆れているのが、態度の節々に伝わってくる。
「はぁ……」
そもそも、あんな鉄の塊が何十キロも走れるのがおかしいのだ。下手に動かせば建物を破壊し、生き物の命を奪う兵器と化す。そんなモノを操作するなど、緊張するに決まっている。
せめて別の素材で出来ていれば、僕でも運転できるのに。
「……はぁ……」
そんな、無意味な言い訳が出てくる自身に嫌気がさした。またため息が出る。
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