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すっかり暗くなり、街灯が照らす道を、肩を落としながら歩く。
この位の明るさが、僕の沈んだ表情を隠すのに丁度良い。
幸いにも、普段から人通りが少ない為誰ともすれ違わない。もし他人から見たら、青白い顔の僕はお化けか何かと勘違いされるだろう。
「……はははっ」
自虐的な笑いが出てしまった。
とぼとぼと、家まで向かう。
街灯の下を通り抜けるたびに、明るさに目が眩みそうになる。今の気分に似つかわしくない光だ。
ニャー
猫が数匹、僕の姿を見て鳴いた。
この地域一帯は何故か猫が多い。
幼い頃からそうだったので気にも止めず、いつも猫達と遊んでいた。今でも時々エサを上げて、交流を続けている。
丁度、彼らにあげるエサを持っていた。しゃがんでバックを置き、猫缶を取り出す。
他の猫なら置いたバックを勝手に漁り、エサが他に無いか探し出すらしいが、ここの彼らはみんな利口なので、そんなことはしない。
おとなしく座って待っている。
猫缶を開け、置く。
猫達は礼儀正しく、がっつく事なく食べる。
ニャー
一匹が僕を見て鳴いた。
お礼を言っているのだ。
「どういたしまして」
頭を撫でる。彼は気持ち良さそうに目を細め、身をよじる。
「はははっ」
癒される。気持ちが少し上がるのを感じた。
座り込み、みんなの頭を撫でた。
構ってくれるのが嬉しいのか、エサを食ベ続けているがされるがままだ。
それが楽しくて、ずっと撫でた。
モフモフで気持ち良い。凄く安心する。
気を許した僕は、思わず今日の出来事を口走っていた。
人に聞かれるのは恥ずかしいが、彼らになら快く話せる。時々ニャーニャーと相槌を打ってくれるのも嬉しい。
そうこうするうちに、みんな猫缶の中身を食べ尽くしたようだ。
ニャー
お礼の鳴き声を上げ、どこかへ歩いていく。
満足して、寝床へと帰るのだろう。
「さて」
僕も帰るとしよう。立ち上がり、歩き出した。
彼等のおかげで気持ちは良くなった。
足取りも、明らかにさっきより軽い。
今日の嫌なことはまだ心に残っているが、気にならなくなった。
やはり彼等は素晴らしい。
気分良く歩いていると、いつの間にか家の前までたどり着いていた。
家に入ったら何をしようか考え、近付いていく。
そうして、ドアの前まで来たところで。
「……あれ」
ドアに紙が貼り付いていることに気付いた。
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