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それは人のシルエットをしているが、人では無かった。人として振舞っているが、絶対的に別種の者であると、一目で分かった。
その者は、顔が猫だったからだ。
よく見ると、手も猫だ。足は見えないが恐らくそこも猫そのものであろう。スーツやビジネスシューズを人間より着こなしているのが、より異質さを際立たせる。どっから出しているのか、白い尻尾まで出している。全体的に白い猫だ。
「わたくし達のご案内に対応していただき、ありがとうございます。わたくし一同
、心よりお待ちしておりました」
唖然としていると、人型の猫が話しかけてきた。
わたくし達?
頭は混乱しているが、その言葉に引っかかりを覚えた。目の前には一匹……いや、一人?の猫しかいない。
一体どこにいるというのか
「まさか」
後ろを振り返った。
「うおっ」
いつの間にか、十数匹くらいの猫が横に並んでいた。
黒、三毛、ぶち、白などなど、色んな柄がいる。どの猫も、最初に話しかけてきた猫と同様にスーツを着こなしている。
あまりにも不可思議な出来事が立て続けに起こり、困惑が途切れない。
だが、そんな状況であっても不思議と恐怖は感じなかった。
むしろ、これからこの猫達に何をされるのか。そんな期待を微かに抱いていた。
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