もふもふの初心者運転

4/11
前へ
/11ページ
次へ
 それは人のシルエットをしているが、人では無かった。人として振舞っているが、絶対的に別種の者であると、一目で分かった。  その者は、顔が猫だったからだ。  よく見ると、手も猫だ。足は見えないが恐らくそこも猫そのものであろう。スーツやビジネスシューズを人間より着こなしているのが、より異質さを際立たせる。どっから出しているのか、白い尻尾まで出している。全体的に白い猫だ。 「わたくし達のご案内に対応していただき、ありがとうございます。わたくし一同 、心よりお待ちしておりました」  唖然としていると、人型の猫が話しかけてきた。  わたくし達?  頭は混乱しているが、その言葉に引っかかりを覚えた。目の前には一匹……いや、一人?の猫しかいない。  一体どこにいるというのか 「まさか」  後ろを振り返った。 「うおっ」  いつの間にか、十数匹くらいの猫が横に並んでいた。  黒、三毛、ぶち、白などなど、色んな柄がいる。どの猫も、最初に話しかけてきた猫と同様にスーツを着こなしている。  あまりにも不可思議な出来事が立て続けに起こり、困惑が途切れない。  だが、そんな状況であっても不思議と恐怖は感じなかった。  むしろ、これからこの猫達に何をされるのか。そんな期待を微かに抱いていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加