3人が本棚に入れています
本棚に追加
立っていたのは、二十歳くらいの若い女の子だった。赤いウールのチェックシャツに、真っ白なニット帽。足元は、ずいぶん年季の入った革製の茶色い登山靴。ザック……というかリュックはカーキで軍用品みたいな布製だ。
レトロなスタイルながら、こだわりを持っているって感じ。
何年も前に「山ガール」という登山を楽しむ女子が流行ったってネットの記事を読んだけれど、それの進化形なのかな? 最近はこういうのが流行り?
私が彼女の姿に見入っていると、女の子は気さくに話しかけてきた。
「どのルート登るんですか」
「私、初めて山に登るんです。だから1号路から行こうかなと思ってるんだけど」
「はじめて? 初めて山に登るんですか!?」
彼女は瞳を見開くと、珍しい物でも発見したかのように私を見つめた。使い込まれた登山靴を見ただけで、彼女が山に何度も登っていることは一目瞭然だった。
「私、高尾山は今回が2回目です。登ったのはずいぶん前ですが。今日は、稲荷山コースに登ろうと思ってるんですけど、よければ一緒に行きませんか」
「あ、ありがとう。でも私初心者だし、ついていっても大丈夫かな?」
お連れができるのはとっても心強いけど、どう考えても彼女の方が上級者だ。初心者の私がついていって迷惑じゃないだろうか。
彼女は人の良さそうな笑みを浮かべた。
「そんな良い登山靴履いてるのに、登山道を歩かないなんて靴がかわいそうですよ。初登山に興味があります。私も同行していいですか」
最初のコメントを投稿しよう!