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「春ちゃんはどうして山に登ってるの?」
私は彼女の背中に問いかけた。
登山道はゆるやかな傾斜になり、私は話しかける余裕が出てきた。
「うーん、なんででしょう……あ、もうすぐ頂上みたいです」
「え、ほんと!?」
午前10時ぴったり。ゴールへとたどり着いた。
「高尾山頂」とかかれた巨大な標識が、ここが山頂であることを証明していた。
ネットで調べていた通り、頂上は公園みたいに舗装され、綺麗に整備されていた。自動販売機に食事のできそうなお茶屋さんが立ち並んでいる。
「高尾山登頂おめでとうございます」
春ちゃんにそう祝われて、じわじわと嬉しさと達成感がこみ上げる。
「ありがとう。春ちゃんのおかげだよ、本当にありがとう」
「いえいえ、真希さんの努力の結果です」
「春ちゃん、あそこの山頂って書いてある所で写真撮らない?」
春ちゃんは、さっぱりとした顔でその申し出を断った。
「いいえ、私はここでお別れします。この先の陣馬山まで今から向かいますので。帰りは1号路で戻れば、楽しめると思いますよ。」
「えっ、うそ。ここでお別れ?」
一緒にご飯を食べようと思っていたのに。お茶屋さんで名物「ごまだんご」でも奢ろうと思ったのに。
「あ、そうだ。どうして山に登るのかって質問に、答えていませんでしたね」
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