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「泊まりで山に登るときは、テントとか水とか食料とかすべて持っていかないといけません。生きていくのに最低限必要な荷物をすべて背中に担いで、一歩一歩ひたすら前に歩いていく。ふと振り向くと、自分の歩いてきた道が、後ろに長く長く続いているんです」
それが冬山なら、自分たちの足跡がずっと続いているのだという。きらきらと雪が反射して、まるでこの世のものとは思えない純白の世界が現れる。
「生きてるって感じました。自分の歩いてきた道が、目に見えるってなかなかないことですよね」
たしかにそうかもしれない。
「真希さんも、自分の好きな山を歩いてくださいね」
「あ、まって春ちゃん、連絡先――」
振り向くと、春ちゃんの姿はもうなかった。
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