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「《お時間でございます。皆様ご到着になられました》」
「父上たちはもう来たのか」
ちびちゃんのほっぺをつんつんして遊んだり妖精ちゃんに髪で遊ばれたりと、それはもう至福の時間をすごしていた俺に告げられた一声
正直その言葉はまだ聞きたくなかった
使用人さんの紅茶をライムのお菓子と合わせて飲んでたい、一生お顔にふたつあるぷにぷにをつんつんしてたいぃ...
「《アスモデウス様、早く行きませんと。いつ庭が破壊されるか分かりませんし任せている使用人たちがセクハラを受け》」
「僕の所有物に手を出すなんて許せないな。さっさと案内しろライム」
「《承知致しました》」
日々頑張ってもらっているエルフさんたちをいつまでも俺の諸事情で危機にさらすわけにいかない
あの存在がセクハラのような邪智暴虐の王及び子息の魔の手からお守りしなければ
膝に乗せていたチビちゃんを下ろし…下ろ、下ろし……?あれ????
バラ園では茶会に呼ばれた者たちがすでに集まっており席に着いている
ひとつテーブルが置かれ椅子が6脚のみのこじんまりしたものかに思えるが異例なのはその集まっているメンバーだ。そばに控えている者はライムをのぞいてあまりの恐怖に顔を青くしていた
「おいスライム、アスモデウスはまだなのか」
「《まもなく来られます。お待ちください》」
「あの子は本当にマリアに似て焦らすのが好きだな。いつまで俺を待たせるつもりだ」
徐々に重くなってくる空気。比例して使用人たちの顔もさらに悪くなっていった。
息子たちすらこの皇帝には何も言えない。この国は実力主義、弱いものは強いものに従うが道理だ。この苦行はひたすら耐えるしか為す術がない
ある例外を除いては
「《帝王様。恐れながら申し上げますが、顔が東方に伝わるかの鬼の形相をしていらっしゃいますのでアスモデウス様が「パパ嫌い!」とお叫びになられると思われます》」
「聞いてもいないのにスライムごときが発言するな。黙れ」
「《せっかく愛息子が反抗期にならぬよう発言してさしあげ》」
言葉は続かない、いや続かなかった
鋭い刃がライムの喉元を捉えている。足元には冷気が漂ってきていて二重の意味で凍りついた空気だ
帝王は席から立ち上がってライムと相対するとにこりと笑った。ここだけ見れば好青年だ、ここだけ見れば
「確かアスモデウスのお気に入りだったな。いまこの首を跳ねたらどうなるか.......見てみようじゃないか」
「《皇帝へい》」
「お待たせしてしましたねみなさん。少々手間取りまして。許してくれますよね」
その場にいたほぼ全員の注目が陛下VSライムから声の持ち主へ切り替わる
彼が来たのは最悪のタイミングだった。けれど重苦しい空気なんて彼にとっては意味をなさない。ただ自分さえ良ければいいのである
皇帝と全く同じ色を持つ彼は少しの申し訳なさもなく笑っていた
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