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「母上、此度のこと大変申し訳ありません。あれしか方法が思いつかず…」
「いいよいいよ。僕のためにしてくれたんでしょう?偉いねぇアズ」
「しかし、母上は私の力が及ばぬばかりにあんな苦しい目にあって」
続けようとした言葉は出なかった
あの日のようにベッドの傍にいる俺の頭を、ママ上に枯れ枝のようになってしまった腕で撫でられたからだ
「いーやアズのせいじゃないよ、全部あいつのせいだから。……それにしてもさ、ここってどこなの?瘴気はおろか、周りに生物の気配すら感じないんだけど」
「ここは私が母上のために作った亜空間です。あの話を聞いてから最終手段でここへ死亡を偽装してから転移させてもらう計画を立てておりました。
ここはいわば私のナワバリ。私より魔力を所有するものが無理やり介入したり、私が倒れたりするようなことがなければこの空間が壊れることは無く、何人たりとも入ることはできません。父上の件は私が手を打っておきます」
パピー無駄に魔力あるからゴリ押しで来れるかもしれんのよ。もうホント、なんなんあのイケメン永遠に爆ぜろよ
そーっと見上げると、ママ上は微妙な顔をしていた
多分あのパピーを俺に相手させるのが嫌なんだと思う
「…………ね、アズ。君は幸か不幸か僕とそっくりな容姿だ。それでいて他諸々はあいつと同じ。あの話を聞いて、賢いアズはアイツがアズにどんな風に接するか分かるでしょう?」
「承知でございます。ご安心を、何とか致しますので」
「……アズ、まさか魔力だけでゴリ押そうとでも思ってる?あいつ無効化して物理でくるんだよ?
今まで部屋に引きこもり本ばかり読んでいた君の華奢な体に力があるの…?」
「……」
「あ、顔逸らした。図星じゃないか」
ハッハー↑バレテーラ
これまで、俺が屋敷の外に出て運動した回数。なんとゼロ
そう、『ZERO』
いやァだってさ、そんなの前世で嫌という程やらされたし、屋敷の周りうじゃうじゃ魔獣いるしいくら襲われないとはいえ怖いやん?(チキン)
元々インドア派だったからここは魔法極めてこうと見事なヒッキー上位互換種へと変貌した訳だが……
いかんせん体力がない。筋力もない
つまりどこかしら身体を掴まれたら年下だろうと詰みゲーである。それがパピー相手ならなおのことだ
「……な、何とかします」
「………」
やめてっ!!そんな目で見ないでママ上っ!!あたしのライフはもうぜろよっ!!
………うわきっしょ(チベスナ顔)
「…アズ。僕とここで暮らすことは出来ないの?ここは安全なんでしょう?2人で暮らそう、ね?」
実に魅力的なお誘い
それが出来ればどんなにいいか……亜空間の存在をパピーに知られる訳にはいかない。そして俺にはやらければならないことがある
ストーリーを狂わせないためにも悪役が欠けることはあってばならない重要禁止事項だ
「申し訳ありません母上」
ここにいたら決心が揺らぎそうだ
早く帰ろう……と、その前に
コツンと自分の額と母上の額を合わせる
「母上、どうかお元気で。さようなら」
「ッ!、待って、ア…………」
穏やかな自然を閉じ込めたような瞳は徐々に閉じていった。小さな寝息が聞こえてくる
俺がかけたのは、闇魔法の精神干渉を応用した忘却魔法。ママ上は俺の事を大事にしてくれている、きっとここにいることしかできずにいることを気にしてしまうだろう
ここは平和だ。誰もママ上を害すものは居ない、何にも縛られない、過去のことなんて考えなくていい
幸せだけに包まれていれば、それでいい
やっと自由を手にすることが出来たママ上に、余計な足枷は不要だろう?
「さようならママ(上)、俺のことは忘れて幸せに暮らしてね」
頬に流れる温かいものはきっとなにかの勘違い、そう思い込んで屋敷の自室へと戻った
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