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真那は憤っていたが、その熱も徐々に冷めていった。
学問の神は、理解力にも優れている。心理学的観点から見ても、目の前の男が嘘を言っていると思わしき箇所は見当たらない。
同時に、少し、同情の念を抱いていた。
それは、自身の居る神社も、最近まではまったくと言っていいほど人が訪れてくれなかったからだ。
──同じ地域を見守る新米の神として、助け合うことも必要かもしれないわね……。
至恋は少し疲れたのか、賽銭の詰まった袋を一度地面に下ろし、肩をぐるぐると回し、腕をぶらぶらと振っている。
話から察するに、毎晩のようにこうして夜道を歩いているのだ。
それは容易なことではない──。
「ねぇ、至恋……」
「ん?」
至恋はゆっくりと振り向いた。
真那は優しい笑みを浮かべ、助け合うことを提案しようとした。
しかし、至恋が再び地面に置いた袋に手をかけようとしたとき、脳内になにかが再現されて、言葉が引っかかる。
──まだなにか、忘れているような……。
そんな真那の目の前で、至恋は賽銭の詰まった袋を持ち上げた。
よほど重たいのか、声が出る。
「よっこらしょ」
「ねぇ、至恋……あんた、なんで賽銭箱に入っていたの?」
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