ホワイトムスクの贈り物

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「昔から、中国でもヨーロッパでも日本でも、猫の出て来る作品は多いね。それだけ昔から、人の傍に居る動物なんだね」 上杉さんは身を乗り出す。 「身近にいる動物だからこそ、怪談噺にも良く出て来るって事ですかね…」 「身近なモノが妖怪の様になると怖いしね。でもそれだけじゃないんだよ」 私はさっき見たサイトに書いてあった内容を思い出した。 「怪談噺が作られた当時も野良猫ってのが町に溢れててね。ほら、今みたいに動物病院も無いから去勢手術なんて出来ないだろ。それで町中何処を見ても猫が溢れてたんだろう。そんな猫を刀の切れ味を試すために斬る武士が横行したんだね。それで、そんな事をすると猫が化けて出るよって事だったんだろうね」 上杉さんは深く頷く。 「今じゃ野良猫も少なくなったからね。野良犬なんて殆ど居ないんじゃないかな」 私は机の上のタバコを取り咥えた。
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