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目の前の事をありのままに受け入れる。テレビが観せている映像を素直に信じる。それがどんなに幸せな事か。余計な心配をしても不安になるだけ損だ。
空には太陽が輝いている。毎日規則正しく上空を移動している。
「まるで昔みたいだね」
「そうだな。青空だ」
地上はもう人間の住める状態ではなかった。環境の悪化、気候変動、放射能汚染。空は灰色の雲に覆われその向こうに薄ぼんやりとした太陽の光らしきものが見えるだけだった。人類は肉体を持つ事を諦めた。全ての人類は地下シェルターでコールドスリープに入った。
今僕たちがいるのはバーチャルの世界だ。肉体は眠りについているが意識はバーチャルの世界にいる。何年も、何10年も。みんな自分の一番幸せだった時の思い出の中で生き続けている。
僕とマサシはこのシステムの管理人だ。不具合が生じたら修整する任務を担っている。そのため親の幸せだった頃の思い出の中で小学生として生きている。
今回の月面着陸は退屈なバーチャルの世界に住む人類へのサプライズプレゼント。そしていつか来る日のための布石だ。
学校と称して僕たちは研究所に出勤する。毎日システムの点検をし、宇宙へメッセージを送り続けている。
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