Chapter4:終息

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「そうよ。あなたは波玖を助けるつもりだったんでしょうけど、ウイルスにかかった波玖はずっと悩んでるのよ。自分があの5人を殺しちゃったって。文巴、その責任とれるの?」 「馬郡さん……」 私に負けず、吹風も自分の意見を率直に文巴にぶつける。すると、龍心がかばうようにしゃべり始めた。 「わ、私がいけないのです。あんなウイルスを…『スーサイド』を試作したのはこの私ですから。お嬢様のご命令とはいえ、ちゃんとお断りするべきでした。研究者としてのモラルが欠けていました。申し訳ございません」 「ちょっと龍心!」 「お嬢様。もう隠し通せませんよ。彼らは既に見抜いておられます。正直にお話されたほうが、楽になれますよ」 「くっ……!」 悔しそうに歯ぎしりをする文巴。そんな彼女を、みんなが黙って見つめる。 その後少しして、文巴は話題を逸らすように父親の話をし出した。 「私の父はね、この研究所の所長で自殺の研究をしていたの。精神科医とは別の領域で、自殺を予防できる新薬の開発をしていたわ。私が自殺について知識があったのも、そんな父の影響を受けていたからよ。でも父には持病があって……末期の胃癌(いがん)だったの。そして2年前、私が中学2年生の冬に父は亡くなった。それ以来、弟子だった龍心が研究所を引き継いで新薬の開発にも携わっているわ」 そこまでしゃべりふうっとため息をつくと、話題を高校と『スーサイド』関連に戻して再び語り始めた。 「2月の頭だったかしら?兵頭くんが、常磐と皆野に嫌がらせされてるのを見たのは。私ね、こう見えてあなたのこと好きだったのよ。顔も童顔でかわいいし、守ってあげたくなる感じ?お父様がお医者様だってのも実は知ってた。研究者の娘である私と合うんじゃないかって。だからあなたを邪魔する彼らが許せなかった。『スーサイド』を龍心に作らせて、ウイルス感染で彼らを自殺させればあなたは救われる__それを助けた私に振り向いてくれるんじゃないかって、期待してたのよ。でも結果はあなた自身を苦しませ、関係のない犠牲者まで増やしてしまった。それはすごく残念だし、反省しているわ」
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