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プロローグ:完成
「お嬢様。ついに出来上がりましたよ。お嬢様が待ち望んでいた、"新製品"がね……」
ある研究所の一室で、丸メガネをかけて頭が禿げかかった初老の男性が、そう言って若い女性にニコリとした笑顔を見せる。
「さすがね。見せて」
お嬢様と呼ばれた女性は、初老男性から注射器のようなものを渡されると、その中に入っている透明な液体を見るなり不気味に微笑んだ。
「これが例の"新製品"なのね。ついに完成したんだわ。でも時間がかかった割にずいぶんとコンパクトに収まってるけど、果たして性能は確かかしら?」
「ご安心ください。その液体には、お嬢様が望んでいる"効果"を発揮する成分がしっかりと含まれております。あとは実用して確かめてみてはいかがかと」
注射器のあまりの小ささに少し疑いをかけた女性に、初老男性は全く動じず自信満々にそう答えた。
「そうね。さすがあなたはパパの一番弟子だわ。これで"彼"を救うことができる。邪魔者どもを排除して、"彼"の方から私に振り向いてもらうためにね。ウフフフフ……」
女性は"新製品"である液体を右手に持ち、左右に揺らしながら高笑いした。その姿はあまりの美しさからか、"死の女神"が嘲笑っているようにも見えた。
これからこの液体に纏わる、とんでもない"絶望の物語"が幕を開ける__。
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