Chapter4:終息

3/10
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
2 自白 文巴は私たちを、奥の食堂まで連れてきた。そして初老男性に目をやった。 「紹介が遅れたわね。彼は父の後輩の、大月龍心(おおつきりゅうしん)さんよ。父が離れた後、後継者としてこの研究所を守ってくれているの。今は私の身の回りのことも手伝ってくれている。まさしくパパ代わりね」 「いやお嬢様。恐縮でございます」 文巴に紹介された龍心は、父親代わりと言われ照れくさそうに微笑み、私たちに会釈をした。 「さてと。一つだけ聞かせて。どうして私に目星をつけて、ここまで辿(たど)り着いたのか。兵頭くん。私があなたに執拗(しつよう)に話しかけたから?」 相変わらず腕を組みながら、文巴は波玖に尋ねる。波玖はゆっくりとその問いに答えた。 「うん。白根さんが声をかけてくるなんて、今までほとんどなかったからね。しかも、『スーサイド』が届いた翌日から毎日。さすがに違和感を覚えたよ。僕の様子を探っていたのかなって」 「あなたのことが心配だったのよ。常磐くんたちにいじめられてたのを見てたから。『スーサイド』?そんなもの知らないわ」 「文巴、ここまで来てしらばっくれんの?」 未だに自分がウイルスの送り主だと認めようとしない文巴に(いきどお)りを感じ、私は語気を強めた。 「蒼央。あなた、ずいぶんと突っかかるのね。あなた検索術が特殊なんですってね。なんでもすぐ調べられちゃうとかって。ここも調べてたら行き着いたの?」 「そうよ。あなたが怪しいと思ってから、"静岡市 白根"で検索したら、この化学研究所がヒットした。あなたの家だと確信は持てなかったけど、みんなで様子を見に行くことにしたの。あなたさっき言ってたわよね?自殺の連鎖で、無関係な生徒まで亡くなったのは想定外だったって。それって空菜たちのことでしょ?あなたの計算では、嗣博と賢四郎の2人がターゲットで、彼らだけが自殺すればそれでよかった。波玖をイジメから守るために。そうなんでしょう?いい加減に認めてよ、文巴!」 私は妙に感情移入し、泣きそうになりながら必死に叫んだ。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!