Chapter4:終息

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そこまで言って、文巴は目をつぶった。 私は(ひる)まずに、強い口調で彼女を非難した。 「そう、あなたのやったことは決して許されることではない。波玖を操り"感染源"にさせ、ターゲットのみならず無関係な3人をも犠牲にした。彼はずっと自責の念に駆られている。私や他のクラスメートも、精神的ショックを受けているの。これだけの大事になってまで、波玖を助けたかったの?それは(ゆが)んだ愛情よ。いやそれどころか、あなたは彼を愛してなんかいない。弱い者を助けようとしているだけ。究極のナルシストよ!」 私は怒りを抑えきれず、かなり冷たくそう言い放った。 文巴は黙って私を見つめていたが、特に反論もせずに素直に認めて言った。 「自分に酔ってる……か。そんなつもりはなく彼を助けたい一心でウイルスを作らせたけど、結局私の自己満足ってことよね。否定はしないわ。誰一人救えなかったどころか、みんなを悲劇に巻き込んだ。人を意図的に遠隔操作で自殺させたわけだから、間接的な殺人罪よね。蒼央、私警察に自首しようと思うの。あなたたちに正体がバレてる以上、もう言い逃れできないし。でもその前に兵頭くん、あなたにワクチンを打たせて。『スーサイド』の効力を鎮めるためのワクチンよ。あなたにはまだ強い自殺願望が残ってるはず。このままではずっと苦しいでしょう。ワクチンを打てばそれが取り除かれ、精神的にも落ち着いてくるはずだから、自責の念もかなり軽くなるはずよ」 「わ、わかった。白根さん、こんなこと言っても気休めにしかならないけど…悪いのはキミと大月さんだけじゃない。僕もウイルスを注入した時点で誘惑に負けたんだ。あの時は本当に嗣博たちが怖くてたまらなくて……。 自殺なんてするわけないと甘く考えて、軽い気持ちで注射してしまったんだ。僕があの時『スーサイド』を捨てていれば、悲劇は起きなかったって思うこともある。だから…僕も同行するよ。警察に事情を話す。場合によっては、キミの罪が軽減されるかもしれない」
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