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目撃
昼休み。
私はクラスでいちばん仲がいい、同じパソコン部所属の馬郡吹風と教室でおしゃべりをしていた。
「吹風ぁ、なんか最近寒いよね〜。月曜日だし、朝布団から出るのが億劫だった」
「だね。蒼央、寒がりだもん。でもそれもそのはず、朝の最低気温2度だったんだって」
「ひえ〜、道理で凍えそうだったわけだ!暖房効いてる教室はあったかくていいわぁ〜」
話の内容は他愛もないが、私は吹風と一緒にいるのが最も楽しくて落ち着く。
吹風は背が低く髪型はショートカット、おまけに冷静な性格なので私とは対象的だ。だが家も近く、サイクリングやパソコンの趣味も共通しているため、入学時から自然と打ち解けあっていた。登下校は、大抵一緒に自転車をこいでいる。
「そういや気になるニュースとかあった?なんか退屈でさー」
私がつまらなそうに聞くと、吹風はスマホのネットニュースを見て答えた。
「事件とかは特にないけど、新型の薬が開発されたらしいわよ。なんでも"自殺防止"に効くとか」
「じ、自殺?へえ、そんな薬あんの?」
私が彼女に問いかけた、その刹那だった。二人組の不良が、気弱そうな生徒を囲って何だか絡んでいるような光景が目に入った。不良たちは不気味に笑い、気弱な生徒は辛そうに下を向いている。席が遠く、会話の内容までは聞き取れない。
「はーくくん。また放課後、例の運動場に集まろっか。先週の続きしようぜ」
茶髪を掻き分けながらこう嫌味ったらしく誘うのは、不良グループのリーダー格である常磐嗣博。一方で、絡まれている方の生徒の名は兵頭波玖という。
「なんやかんやで俺らといると楽しそうだもんな。仲良くやろうべ」
もう一人の不良で角刈りの大男が、怯える波玖の肩を叩く。皆野賢四郎だ。
明らかに怪しい雰囲気。波玖は物静かだが、今まで嗣博たちに目をつけられている様子は感じられなかっただけに、何だか今日はやけに目立つ。
その後すぐに奴らが教室を出ていったのを見計らって、私は例のおせっかいで波玖を気遣った。
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