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「波玖、大丈夫?今嗣博と賢四郎にいちゃもんつけられてなかった?」
私が尋ねると、波玖は先ほどの不安げな表情から一変し、顔を赤らめて驚いたように否定した。
「碓氷さん!いや違うよ。昨日のテレビ番組の話をしていたんだ。昨日ホラー映画をやっていてさ、思い出したら怖さが甦ってきて……顔が青ざめちゃった、ははは」
「そうなんだ。ならいいけど。あいつら結構ワルだからね?気をつけなよ」
「う、うん。ありがとう」
無理をするような作り笑いを見て、明らかにその場をやり過ごそうとする嘘だと勘づいたが、これ以上詮索するのもどうかと思い、念を押すだけに止めて席に戻った。
「蒼央、絶対あれイジメの前兆だよね」
突然飛び出した私を待っていた吹風が、私の言いたいことを代弁してくれた。
「そんな風に見えた。でも証拠もないし、あれこれおせっかい焼くのも違うしね。それより午後の授業体育じゃん。着替えるだけで面倒〜」
「しかも持久走だよ。この寒いに」
「マジふざけんな」
3人の男子のいつもと異なる様子を気にしながらも、普段の明るい調子に戻る私。
だが、この時は知る由もなかった。
この大人しい兵頭波玖が、これから起こる絶望的な出来事の"キーパーソン"になろうとは……。
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