prova

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「今月は何人」  ペール缶や石油缶が乱雑に置かれている街の一角。  音という概念までもがなかったかのような静寂を破ったのは一人の少女の 少しくぐもった声。  ガスマスクの簡易版のようなもので表情は伺えない。腰まで届きそうな赤みがかった茶色の髪は手入れが行き届いていないのか、まとまりなく四方八方にはねている。 「今月は5人、azul(アスル)ámbar(アンバル)lino(リーノ)sereza(セレッサ)とあとは今日の朝にglicina(グリシーナ)」  少女の隣りで今日死んだ仲間の名前を読み上げるのはcadena(カデナ)。13歳くらいの少年で、彼も簡易ガスマスクをつけている。少女よりは少し背が低い。  「リーノはまだ大丈夫だと思ってたんだけど。まだ15歳だったし。」  カデナは真っ白な髪をかきあげつつ手に持っている紙の束を見ながらプローヴァに言った。  プローヴァは黙ってカデナを見た。  
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