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カデナとプローヴァは無言でîle déserte、通称・デゼルトへ向かう。
もともとは住民ホールだった5階建ての建物で、皮肉屋のluceが名前をつけた。
「無人島」という意味らしいがどんどん人口が減っていっているこの街では洒落にならない。そのルーチェも3ヶ月前に16歳で死んだ。
16歳は少し早い気もしたがルーチェは無駄に大人びていたから。大人は死ぬものなのだ。
「帰ったよ」「ただいまー」
二人は住民ホールの二階の窓から建物内へと入る。古い木のサッシがミシミシと音を立てた。
「おかえりカデナ!」「プローヴァが戻ってきたよ!」
まだ幼い子どもたちは無邪気に走り回っている。カデナは顔を少し緩めて自分らを迎える子たちを見た。
きっとまだ何も分かっていない無邪気な笑顔は癒やしとともに嫌な棘を含んでいた。
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