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「助けに来るって…」
「本当に助けに来てくれるような優しい人なら俺らを置いてってないよ」
言葉に詰まるフレンテに対し、カデナは目を伏せてつぶやく。白い前髪が目にかかった。
『隣の街に着いたら助けを呼ぶから待っていなさい』
『子どもに旅は危険だ。助けに来るまでみんなで助け合って、できるね?』
親の、親戚の、兄姉の、先生の言葉はほぼ全て同じだった。
『子どもは役に立たないから置いていく。まだ生きれるかもしれないし』
「フレンテに怒っても仕方ない」
面倒臭さがにじみ出ている声調で言ったのは今まで黙っていたウルティオ。
「それより、どうするの、逃げるの」
投げやりに吐き捨てるようにウルティオは言う。
沈黙の図書室、時計の秒針の音だけが時が過ぎていることを知らせている。
「僕は、」
沈黙を破ったのはプローヴァ。視線をウルティオに向けて言う。
「ここに、残らないと。僕が死ぬまで」
決意をはっきりと伝えるプローヴァにウルティオは何も言わなかった。
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