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「その説明だと、葬式に大量の幽霊がやってくる事にならない?」
「そこは、僧侶とかの腕の見せ所だ。お経があると、残留思念は清められて酷く不味くなる。普通は食べないらしい」
「らしい?」
「俺はゲテモノを食べ過ぎたせいかな。普通に食べられちゃうんだよね。あの独特の苦みが癖になるっていうか、ビールみたいな感じでね。うん。だから、俺は少しだけ食事をさせて貰う代わりに、新人に出来る限りの説明と手助けをさせてもらってる」
「なるほどね」
「まぁ、今すぐ現状を受け入れるのは無理があるかもしれないけどさ。別に幽霊になったからと言って辛気臭くなる必要はないんだ。第二の生だと思ってさ。案外、気楽に生きていけるもんだよ」
「もしかして励ましてくれてる?」
「うん? いや、まぁ、どうだろ」
秋山はボリボリと、わざとらしく頭を掻いた。
階下で人の声が聞こえた。屋上の柵にもたれ掛かって真下を眺めると、霊柩車に親戚の男性達が柩を担いで納める様子が見える。霊柩車の後方で遺影を持って佇む少女が、眩しそうにこちらを眺めていた。
「おっと、そろそろ出棺の時間みたいだ。大体説明は終わったけど、君はどうする?」
「そうね。……さっき手助けって言ったよね、秋山。こういう場合は私を助けてくれるの?」
「どういう場合?」
柩が霊柩車に積まれ、親族たちがマイクロバスに乗り始める。少女はまだこちらを見ている。
「あそこにいるのが私よ」
私は、霊柩車の後方に立つ妹を指差した。
「これは妹の葬式なの」
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