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「追ってどうするの?」
「どうするって……」
「何でこんな事になっているか分からないのに、無闇に動いても打つ手が無いでしょ? それより、まだ確認したい事があるの、秋山。綾が私の体に乗り移ってるとして、そういう事ってよくあるの? 仮にそうだとして、私達は意思疎通できるものなの?」
それに、何年も放置した『妹』に、どんな顔をして会えばいいのかも分からない。
「正直に言うと、どちらも分からないな。ただ、そんな前例、俺は知らない」
「そっか。うーん」
「樹里ってえらく落ち着いてるよね。……君、ホントに中学生?」
「本当は大学生なの」
「またまた。それは鯖読みすぎだよ」
霊柩車とマイクロバスが葬儀場から遠ざかり、どんどん小さくなる。バスが交差点を曲がり、その二つの車体は完全に見えなくなった。
「やれやれ。それで? 君は何か案があるのかい?」
「そうね、秋山の知り合いの幽霊って何人位いる? 他の幽霊の人にも色々聞いてみたいんだけど」
「……いない」
振り向くと、秋山はマントで顔をすっぽりと隠していた。全然可愛くない。むしろ、少しムカつく。春の暖かな日差しに不釣り合いな無意味な静寂が辺りを包み込む。
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