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鍵の開いた扉を開けると、そこには物語を書き始めた頃の私がいた。お父さんのお古のパソコンで、拙いタイピングで文字を打つ私の姿が見える。
小説が好きで、自分でも書き始めたけど、上手くいかなかった。頑張って時間をかけて書き進めても、後から読み返すと、酷くつまらなく思えてしょうがなかった。誰かに読んで欲しい癖に、面白くないと言われたく無かった。がっかりして欲しくなかった。
……でも、それだけじゃない。私の拙い文章でも、読んでくれる人がいた。面白い、好きだと言ってくれる人がいた。感想をもらう、それだけで、小躍りするくらい喜んだ。
その嬉しさを、その感動を、私は忘れていた。
蓋をして、目を背ける内に無くしてしまった、私の原点。コンプレックス。私は埃の積もっていたそれを拾い上げ、大事に胸の奥へ仕舞い込んだ。
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