15人が本棚に入れています
本棚に追加
「そのオブラートというかね、うん。まぁいいや。それでこういう場合はどうする?」
「うーん。こういうパターンは初めてでね」
樹里は腕を組んで頭を傾けながら考える。でも、何の案も思い浮かばないようだ。彼女は改めて秋山を観察する。全身黒タイツで羽マントを着た、無精ひげでボサボサの髪型の三十路の男が目の前にいるだけだ。触れてみるのは、やはりハードルが高い。
樹里の視線に気付いたのか、秋山が口を開いた。
「とりあえず俺が知ってる事を話そうか? 何かのヒントになるかもしれない」
「じゃあ、お願い」
「君は今まで幽霊とか信じてたタイプ?」
「いいえ」
「それは何か理由ある?」
「理由? そうね……。死んだ生物が全部幽霊になったら、世界が埋まっちゃうでしょ? 別に生物が全て幽霊になる訳じゃなく、未練とか怨念が必要と仮定しても、百年単位で遡っていけば何処にでも居そうだし。そんなの、空気じゃなくて幽霊を吸って生きてるみたいで、気持ち悪いじゃない」
「それは、幽霊ってヤツの考え方が間違ってるんだ。幽霊だって死ぬ事はある。それに、君はさっき夢だと思うって言ってただろ? あれはある意味では正しい」
「どういう意味よ?」
「驚くなよ、樹里」
秋山は不敵な笑みを浮かべる。
「この世界は忘れられた記憶や夢で満ちている。そして幽霊は、それらを食べて生きているんだ」
「それで?」
樹里が間髪入れずに聞くと、秋山は悲しそうな目で彼女を見た。
最初のコメントを投稿しよう!