2. 無題

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「そのオブラートというかね、うん。まぁいいや。それでこういう場合はどうする?」 「うーん。こういうパターンは初めてでね」  樹里は腕を組んで頭を傾けながら考える。でも、何の案も思い浮かばないようだ。彼女は改めて秋山を観察する。全身黒タイツで羽マントを着た、無精ひげでボサボサの髪型の三十路の男が目の前にいるだけだ。触れてみるのは、やはりハードルが高い。    樹里の視線に気付いたのか、秋山が口を開いた。 「とりあえず俺が知ってる事を話そうか? 何かのヒントになるかもしれない」 「じゃあ、お願い」 「君は今まで幽霊とか信じてたタイプ?」 「いいえ」 「それは何か理由ある?」 「理由? そうね……。死んだ生物が全部幽霊になったら、世界が埋まっちゃうでしょ? 別に生物が全て幽霊になる訳じゃなく、未練とか怨念が必要と仮定しても、百年単位で遡っていけば何処にでも居そうだし。そんなの、空気じゃなくて幽霊を吸って生きてるみたいで、気持ち悪いじゃない」 「それは、幽霊ってヤツの考え方が間違ってるんだ。幽霊だって死ぬ事はある。それに、君はさっき夢だと思うって言ってただろ? あれはある意味では正しい」 「どういう意味よ?」 「驚くなよ、樹里」  秋山は不敵な笑みを浮かべる。 「この世界は忘れられた記憶や夢で満ちている。そして幽霊は、それらを食べて生きているんだ」 「それで?」  樹里が間髪入れずに聞くと、秋山は悲しそうな目で彼女を見た。
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