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「こんにちは」
意を決して少女に声をかけたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……」
挨拶をしながら近づいた俺に対し、少女は無表情で会釈をする。
少女は見た感じ小学生の中学年くらいに見えたが、ランドセルの様なモノは一切見当たらない。
「こんなところで何をしているのかな?」
「……」
俺の問いかけに対し、少女は空を見上げた。どうやらコレが「答え」らしい。
その少女の答えに対し、俺は「雪を見ているのかな?」と思った。
確かに、ここ最近この辺りでここまで雪が降り、なおかつ「積もる」程なのは珍しいかも知れない。
そこで俺は「なるほど。だからこそ、少女はその様子を見たかったのか」と納得する事にした。
「そっか。でも、ここだと寒いし雪も積もっちゃうから……そうだ。コレ使って」
「!」
俺が差し出したのは、今まさに使っている『傘』である。
本当であれば家か学校に行くように促すべきだろうけど、少女も何かしら事情があるのかも知れない。もしなかったとしても、赤の他人である俺が出来るお節介はここまでだろう。
少女はさすがに驚いた様子だったが、俺は傘を手渡した。
幸いな事にこの公園から駅まではさほど離れていない上に、面接会場も最寄り駅から下りてすぐの場所にある。
だから、ここで少女に傘を渡したところで特に問題はない。
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