学園2ー6 タナさんの授業と高級な夕食

3/3
前へ
/171ページ
次へ
「そろそろですね。」  タナさんはテキパキとテーブルを片付け、食事の準備にかかる。  それから温室のドアを開けると、すぐに先生が鍋を抱えて入ってきた。  この二人、何という以心伝心。  阿吽の呼吸ってやつ?  素直に凄いと思う。    深めのボールによそわれ、目の前に置かれたのは見慣れないものだった、、、。  凄く美味しそうな匂いだけど。 「せっかくだからお米にしたんだ。  この国じゃあまり馴染みがないでしょ。」  確かに。  米が主食の国はあるらしいけど、食べたことはない。この国は麦畑ばかりだ。 「先生は北東の国の御出身ですか?」  聞いたのはネス。 「北東?違うけど、こっちにも米も食べる国があるのは嬉しいな。  ネス君は行ったことあるの?」 「いえ、父が食文化を知るのが好きで、商人を通して少し。」 「流石だねぇ。  ほら、熱いうちに食べてみて。」  頂きます。  熱いっ、けど、美味しい。  スプーンをフゥフゥしながら口に運ぶ。お腹もすいてるから止まらない。 「ウマッ。」  イランが早速声を口に出した。 「これ、薬膳じゃないっしょ。」 「薬膳だよ。  野菜と干し肉のスープで米を炊いたんだ。  それにね、ニンニク、ショガ、レンソを足して、タカノ茸も入ってる。  あとー、内緒の食材も。  疲労回復間違いなしっ。」  そう言ってニコニコ笑う先生。  、、、この一杯でおいくらの価値があるのでしょうか?とは考えないでおこう。    あっと言う間に食べ終わり、早く寝ないと、と帰りを急かされた。  確かにすっかり夜だ。  帰り際に、貴族3人組が再度先生に頭を下げていたのは印象的だった。  ネスは必死でレシピを聞いていた。    死にかけた経験が彼らの何かを変えたのかもしれない。  いや、タナさんに脅されたからかもだけど、、、。  自ら頭を下げるような奴らじゃなかった。  明日からは堂々と研究に打ち込めると思うと嬉しくて仕方ない。  俺はイランとナコと今日の興奮を語りながら寮へと帰った。  爆睡して翌朝、身体が軽いし、筋肉痛一つないことに驚き、授業で籠いっぱいにしたロエが出てきたのを見て、揃って苦笑いしたのだった。  一日で凄い経験をしたけど、もう懲り懲りだ。 ーーーーー  その日の放課後。  ナコはマイとロンと温室へ、イランはエリと訓練へ。  俺は、資料を持ってギュンダ先生を訪ねた。 「お、ついに研究論文が出来たのか?」 「それもありますが、、、。  先生、俺、新しい研究がしたいんです。  それで、これ。」  差し出す資料を先生が受け取る。 「魔石と土の研究は終わったのか?」 「はい。  そこにまとめてあります。魔石では一定の効果以上は上がらないんです。  それで、次の資料なんですが。」 「ん、ああこっちか。」 「今日の授業で使ったロエのような、採取量や効果の高い薬草が出来る温室を作りたいんです。  先生、協力してくれませんか。」 「そりゃ、生徒の頼みは協力してやるが、、、資料をかりても?」 「はい。」 「私以外の教師に見せてもいいか?」 「、、、はい。」 「わかった。  読ませてもらう。返事はそれからだ。」 「よろしくお願いします。」  翌々日、先生に呼ばれて訪ねれば。  先生だけでなく、学園長も立っていた、、、。    
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加