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ジークとサニャ1 同士は言葉なくとも通づる
ーーー
行商をしつつ旅をする薬屋の息子と侍女。
歳は十代と、二十代。
暫くの滞在と仕事を求めている。
高位魔法士のようだが、自覚なし。
他国から来た模様、言葉にやや難ありで、上手く特定できず。
悪意は感じず、様子を見られたし。
ーーー
よし、報告はこれでいいな。
ドゥはいい子っぽいし、害はねぇだろ。
タァナは、スパイって言われたら、、、うん。言われたら考えよう。
ここ王都じゃねぇし、辺境だしな。
なんにせよ、命の恩人にゃ間違いねぇ。
俺は上に報告書を上げ、とりあえず二人の処遇が決まるまでは面倒を見ると伝えた。
さっきの部屋に戻ると、飯を食ってるはずの二人が、、、居ねぇぇ!
二人がいるるはずのテーブルで、しれっと飯を食ってるバカの頭をはたいた。
「だっ!隊長、痛い!」
「マノー、見とけっつったろ?二人は?」
「あ、軍病棟っす。
ほら、衛生班、今めちゃくちゃ忙しいみたいで。猫の手も借りたいっていうからっ!!イダイっ!」
とりあえずもう一発はたいといた。
だって、あの二人すごい手慣れてましたやんっ!とかブツブツ言ってるバカを置いて病棟へ向かった。
ーーー
「これもお願いします。」
病棟横の物干し場で、洗った包帯を干すタァナを見つけた。
綺麗な所作でお辞儀し、肯定を伝えたようだ。
若い衛生兵は新しい籠を置くと、敬礼して戻っていく。
、、、敬礼すんなし。
いや、なんかタァナからは高貴な貴族の香りがする。
わかるけど、、、身元不明の旅人だからな、その人。
「手伝わせて悪いな。」
と、声をかければ綺麗にお辞儀を返してきた。
「ドゥは中?」
頷いて俺の前を歩き出す。
コンコンとノックしたのは、医士官室。
返事を待ってドアを開け、俺を促す。
部屋に入ると、綺麗に礼をしてドアを閉め、去っていった。
「どうしたジークリフ隊長?」
「は、あ、失礼します。」
敬礼を解いて要件を伝える。
「医長、勝手は困ります。二人の処遇が決まるまでは自分が預かることになってますので。」
「そう言うな、彼から来てくれたんだぞ。
それに現場で処置をしたのは彼だと言うじゃないか、おかげで早くに茶が飲めると言うのに。
彼等は恩人であれ、咎人ではないぞ。」
「それはそうですが。」
「座るか?大事な話の途中でな、今少しだけ待ってくれ。」
はぁ、と生返事をし、二人が向かい合って座る机に椅子を持ってくる。
医長の少し後ろに座り、様子を見ることにした。
「さてさて続きだ。
ではこれは貰って良いのだね。」
医長の問いにコクンと頷くドゥ。
「ふっふふ。使ってみよう。
結果は後で知らせるからね。いやぁ楽しみだ。」
言いながら机の上の小瓶を見る医長の笑いがなんか黒い気がする。
「医長、それはなんですか?」
たまらず聞いたが、すぐに後悔した。
「これか、デスワームの唾液だ。」
「は?」
「だから、今日討伐したデスワームの唾液だ。」
「な、なんでそんなもんっ??」
いつの間にっ?てか、気持ち悪い。
嫌そうな顔を隠さずにいる俺、医長はそんな俺に残念な顔を向ける。
「これだから探究心のない者は。のぅドゥ。」
急に振られて苦笑いを浮かべるドゥ。
だよね、唾液もらって喜ぶおっさんとか気持ち悪いよねっ!
いや、採取したのはドゥだから、どっちもどっちなのか??
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