序章 規格外の旅人が現れた。

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序章 規格外の旅人が現れた。

「引けっ!」 「一時退避いいぃぃ!!」  あちこちでそんな叫び声がしてる。  待て待て待て、放棄するなよ。 「隊長!どうします?」 「どうすっかなぁ、、どぉおおすっかあなぁぁ。」    逃げてぇええぇえ。マジで逃げたい。これ、本音。 「撤退?」 「や、駄目ですよね。  あれが領内に入ったら大惨事ですよ。」 「じゃ、死ぬしかないな。」  第一、第ニ隊は壊滅。  いや、そろそろ全滅か?食われてるから。   「配給の魔石は?」 「火が2、地が2、計4つです。」 「チッ!足りねぇな。」 「妥当ですよ、想定外の事態なだけで。」 「とりあえず、一体は殺る。」 「はい。」  一体殺るかあぁぁ。  カッコつけて言ったけど、無理だな。    視線の先には3体のサンド・デス・ワーム。    もうさ、名前にデスが入ってるよね。  んもう、気持ち悪い。  何が?見た目が。  デカいミミズ?赤黒い芋虫?  それがさ、ビッタバッタ目の前で暴れてるんだよ。ギザギザの歯がギッチリ並ぶ口をカッパァ開けてさ。    3m程度ならまだいいよ、、7m越えてる成体が3体だよ。  殉職決定!はい、決定!  確かに雇われてますけども。  この領で生まれ育ったからには背中の町とカワイイ嫁は守らにゃならんのですけど。  俺、もうすぐ父親よ、死にたくないよなぁ。  討伐命令が出た部隊は五部隊。普通は一体を五部隊で対応する案件なわけよ。  二隊はほぼ全滅、第四、五隊は退いてるし。  第三隊だけで、殺れるわけねぇよな。ははは。  生を諦めつつ前を向く。  今奴は第一、ニ隊を捕食中、止まってるうちに叩く。  潜られたら厳しい。  すでに厳しいけれどもっ。  行くしかないっ! 「あの、きゅうなことぅでつが、おてぃつだいいたすます。」 「は?なんて?」  急に聞こえた訛の酷い場違いな女の声に驚き振り向く。  そこにいたのは、いかにも旅装束な男と、女。  どちらもフードを深くかぶり、砂よけでチラリとも顔が見えない。 「話しはあとぅで、急ぐすます。」 「は?」  訛が酷すぎる。  何処の田舎モンだ?  危険すぎる、というか怪しすぎる。行かせるわけにはいかん。  言葉が上手く通じないとみるや、女が身振り手振りをする。  横にいた副隊長のマノーが真似をしながら口にする。    自身を指さす女。 「ワタシ。」  手を大きく回たあと、デスワームを指す。 「オオキイ。デスワーム。」  走る素振り。 「ハシル。」   「隊長、わかりませんでしたぁ。」  わかった、マノーはバカだ。 「デスワームを追ってきたか、追われてきたか、だろ。」  と言えば、コクコクと頷く女。  女は、わかってくれたか、とばかりに男に話しかける。 「皆、死ぬでぃすから、早いすます。」 「ここなら、問題ないだもんね。」 「おそらくは。町も近でますし。」 「よしっ!」  と、二人は言うと俺達を抜いて前に出る。  何が、よしっ、なんだよっ!!  全然よしじゃないからな!
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