降り積もる雪と、駿の大っきな手

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降り積もる雪と、駿の大っきな手

バレンタイン数日前。 「雪予報出てる、傘持ってくのよ」 「はぁい、行ってきまーす」 駿は朝練(ない日でも自主トレで朝早く登校してる)だから、登校はひとり。 「駿ちゃん、傘持ってるかしら」 折り畳み傘を手にして、ママが玄関で見送ってくれる。 「一応持ってくね」 「気をつけてね、行ってらっしゃい」 ママから傘を受け取り、今年は駿にチョコどうしよう、って考えてた。 放課後。 雪降ったって部活あるからな、と、元気よくいつも通り部活に行った駿。 付き合ってる先輩、たまに駿の練習を見てて一緒に帰ってるけど、さすがに今日はいないのかな、なんて思いながら、図書室で係の仕事をしてた。 諦め悪いよね、あたしも。 空気がひんやり、冷たく変わった気がして窓の外を見ると、雪がちらついてる。 積もる前に帰ろうと、急いで片付けて帰り支度して昇降口に行くと、やーべ、もう無理、寒ぃ、とグランドから戻ってきた駿に出くわした。雪で髪も濡れてる。 「瑠羽じゃん、何してた、これから帰んの?」 「図書委員の仕事、降ってきたから早く帰ろうと思って。あ、ママから傘預かってきたよ」 「傘…さんきゅ、忘れてたわ」 震えながらシューズを履き替えて 「着替えっからちょい待ってて、つっても寒ぃよな、教室行こ」 教室に連れて行かれ、さっむ!と言いながら濡れたウエアから制服に着替える駿を待ってる。 小っちゃい頃から駿の裸は見慣れてるけど、後ろ向き。もちろん着替え見てない。 何これ…彼女でもないのに、諦めようとしてるあたしにどんな罰ゲーム? 「教室いても寒ぃな、悪ぃ、お待たせ、帰ろ」 「うん」 着替え終わって昇降口から出るときにはもう、うっすら雪が積もってた。 「やば、滑んなよ、てか俺もすべりそ」 「ちょっと怖いよね」 すっごく気をつけてるけど、滑りそうになる。 「きゃっ!…ふー、危なかった」 転びそうになってしゃがんだら、 「ん」 駿があたしに手を伸ばしてる。 「え?」 なに?ってキョトンとしてると 「転んだらケガしちゃうだろ、手ぇ出せ」 「…ありがと」 どうしよう、今、駿と手をつないで歩いてる。 小っちゃいときは手をつなぐなんてしょっちゅうだったのに、ドキドキなのが駿にバレちゃうんじゃないかって気が気じゃない。 また、つるっと滑って、駿がぐっと強く手を握ってくれてから、ますますドキドキ…ねぇどうしよう。 「…彼女いるのにいいの」 ぽそっと聞いたら 「そんなの関係ねぇだろ、つーか、もう別れた」 「え?また?早くない?」 びっくりして聞くと 「いいから転ばねぇように気をつけろ」 「うん」 駿はいつもの駿で、手をつないでるのは滑って転ばないように、っていう気遣いなだけ。 あたしは親友、家族みたいな存在って、勘違いしないように自分に言い聞かせてる。 「やっぱラクだな」 「え?」 「や、コッチの話」 降りが強くなってきて、駿はさっきよりも、ぎゅ、ってつないでくれてる。 駿の手、大っきくてあったかい。 「転んだら俺も一緒だぞ、でもきっと助けてやるからな」 「うん、あたしも助けるね」 「そんときは頼むな、瑠羽」 瑠羽、って呼ばれたら胸の奥がきゅん、てする。 気持ちの蓋、外しちゃおうか。それとも、まだしとく? 「よそ見したら滑るぞ」 「うん、気をつける」 降り続く雪の中、駿としっかり手をつないでる。 同じ場所に向かって、駿のあったかさをじーんと感じて歩いてく。 バレンタインチョコあげてもいいよね… ずっと一緒にいられたらいいな、って思いながら。
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