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駿と瑠羽はいつも一緒
「駿ちゃん、ご飯置いとくから、先に瑠羽と一緒に食べてて、まだ仕事終わんないの」
「いーっすよ、ママさんいつ食べるんですか」
「あとちょっと、終わったらちゃんと食べるから」
「ぜったいっすよ、めんどいから食わねぇとかダメだからね」
「わかった、絶対、駿ちゃんの言うこと聞くから」
下の階に住んでる駿と、あたしのママとの会話。
フリーライターのママは、取材が入ると出かけるけど、だいたい家で仕事してる。
パパはカメラマンで、日本にいたり外国にいたりで、あたしはママとほぼ二人暮らし。
なのになんで駿がいるかっていうと…
たまたま、同じアパートの二階にあたしたち、下の階に駿たちが越してきたのは、あたしたちがまだ産まれる前のことで、マタニティだったママたちは程なく意気投合。
病院勤めで産休取ってた駿のママは、復帰しても夜勤があるし、パパはずっと単身赴任。だから駿のお預かりは小さい頃からしょっちゅうで、ひとりっ子どうしのあたしたちは、まるで双子みたいに育ったの。
七五三や入園式、お祝い事や行事には日本にいるようにスケジュール調整して、パパがバッチリすてきな写真を撮影してくれる。もちろん、隣にはいつも、駿。
ご飯もお昼寝も一緒のことが多かった幼馴染。
高坂駿(こうさか しゅん)、広瀬瑠羽(こうせ るう)と名簿も続いてるから、小学校に入学しても中学に上がった今も、当たり前のようにいつもそばにいる。
ライターのママは締め切りが近づくとご飯より仕事を優先しがちで、仕事が終わるとよく倒れそうになるから、仕事中でも一緒にご飯食べる約束してるのに、あたしが言っても聞かなくて、駿の話は聞くの。
それで、さっきみたいな会話になるっていうわけ。
駿も瑠羽もひとりっ子だけど、いつもふたりでいるから寂しくないわね、とママたちは言ってて、駿のママはもちろん、あたしのママも、息子がいるみたい、って駿を頼りにしてる。
ママたち、瑠羽はしっかり者だから助かる、って言うけど、そう言われるとそうなるしかないっていうか…わざわざ親を困らすようなことする気はないし、たぶん、それは駿も同じ。
背が越される頃からは駿の方が力持ちになってて、あたしも駿のこと頼りにしてるところはある。人に頼ったり力を借りるのはあまり好まないけど、駿は…家族みたいだし、お互いに助け合って生きてる、といったところ。
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