駿と瑠羽はいつも一緒

1/1
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

駿と瑠羽はいつも一緒

「駿ちゃん、ご飯置いとくから、先に瑠羽と一緒に食べてて、まだ仕事終わんないの」 「いーっすよ、ママさんいつ食べるんですか」 「あとちょっと、終わったらちゃんと食べるから」 「ぜったいっすよ、めんどいから食わねぇとかダメだからね」 「わかった、絶対、駿ちゃんの言うこと聞くから」 下の階に住んでる駿と、あたしのママとの会話。 フリーライターのママは、取材が入ると出かけるけど、だいたい家で仕事してる。 パパはカメラマンで、日本にいたり外国にいたりで、あたしはママとほぼ二人暮らし。 なのになんで駿がいるかっていうと… たまたま、同じアパートの二階にあたしたち、下の階に駿たちが越してきたのは、あたしたちがまだ産まれる前のことで、マタニティだったママたちは程なく意気投合。 病院勤めで産休取ってた駿のママは、復帰しても夜勤があるし、パパはずっと単身赴任。だから駿のお預かりは小さい頃からしょっちゅうで、ひとりっ子どうしのあたしたちは、まるで双子みたいに育ったの。 七五三や入園式、お祝い事や行事には日本にいるようにスケジュール調整して、パパがバッチリすてきな写真を撮影してくれる。もちろん、隣にはいつも、駿。 ご飯もお昼寝も一緒のことが多かった幼馴染。 高坂駿(こうさか しゅん)、広瀬瑠羽(こうせ るう)と名簿も続いてるから、小学校に入学しても中学に上がった今も、当たり前のようにいつもそばにいる。 ライターのママは締め切りが近づくとご飯より仕事を優先しがちで、仕事が終わるとよく倒れそうになるから、仕事中でも一緒にご飯食べる約束してるのに、あたしが言っても聞かなくて、駿の話は聞くの。 それで、さっきみたいな会話になるっていうわけ。 駿も瑠羽もひとりっ子だけど、いつもふたりでいるから寂しくないわね、とママたちは言ってて、駿のママはもちろん、あたしのママも、息子がいるみたい、って駿を頼りにしてる。 ママたち、瑠羽はしっかり者だから助かる、って言うけど、そう言われるとそうなるしかないっていうか…わざわざ親を困らすようなことする気はないし、たぶん、それは駿も同じ。 背が越される頃からは駿の方が力持ちになってて、あたしも駿のこと頼りにしてるところはある。人に頼ったり力を借りるのはあまり好まないけど、駿は…家族みたいだし、お互いに助け合って生きてる、といったところ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!