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「いじめに耐えるのを頑張るんですか? 辛いことがあるたびお父さんに元気なふりをするのを頑張るんですか? いつかその努力は報われるんでしょうか。僕には理解できない」
「.......じゃあ、どうしたらいいんですか。先生に言ったら解決する? いじめをやり返したらいじめられなくなる? 何されるかわからなくて怖くて仕方ない気持ちが、あなたにはわからないでしょ!」
「君のようにいじめに苦しむ子をテレビでいっぱい見てきました。SNSでしたっけ。声を出さず指先1つで人を傷つけられる時代なんです。これからもっと酷いことをされるかもしれない。君は今の人生を耐えられますか?」
彼の言うことに間違いはなかった。中学を卒業するまで耐えれる自信は、ない。もしかしたらいじめがどんどんエスカレートして命を落とすかもしれない。いつかあいつらに殺される。嫌だ、死にたくない。
恐怖で身体が震えてきた。他人事だと思っていたいじめが降りかかるなんて。殺されるくらいなら自分で、と考えていること自体が恐ろしい。自分さえ信じられなくなってる。
「.......私を、助けて」
縋る思いをぶつけた相手は、15分前に出会った男の人だった。いっそどこか遠い国まで連れ去ってほしかった。何もかも捨てて、記憶も消して別人として生きていきたい。そのくらい追い詰められている。
「僕が君を助ける方法が1つだけあります」
男の人は、私の膝の上に1枚名刺を置いた。
「人生紹介バンク.......。えっと、口?」
「これはよいのくち、と呼びます。僕の名前です」
宵ノ口。男の人の名前がようやくわかった。でも人生紹介バンクとは何だろう。聞いたことがない。お父さんは知っているだろうか。
「僕は人生紹介株式会社というところで働いているんです。わかりやすく言うと、君という人材を求める人と君を結びつける仲介人です。色んな場所を旅して、この地に辿り着きました」
どうしよう、ちっともわからない。
困っていることが通じたのか、宵ノ口さんは例をあげて説明してくれた。
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