魔法使いと2人の少女

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海はみんなのお母さん、 みんな海から生まれたの。 それなのにどうして、 兄弟達で傷つけあってしまうのかしらねぇ。 ばしゃりと臭い水を被った時、私は死んだお母さんが昔そんなことを言ったのを思い出していた。 お母さん、私は思うよ。あいつらはみんな、ないものねだりなんだ。何かが欲しくても手に入らず、何かを探しても見つからないから、空っぽを埋めるために気を紛らわせなきゃ自分を保てない。哀れだよ。 ぽたぽたと白い水が前髪の先から雫となって落ちていく。何滴かは目に入り激痛が走った。 いつから牛乳を飲むものではなく、被るものになったのだろう。飲むと腹を下すあれは、ただ自分を汚すための道具と化していた。 だからもっと牛乳が嫌いになった。 毎日毎日あいつらは飽きずに私をいじめた。授業以外の学校の時間はいじめに費やされる。好きな本を読むことも飼育されているうさぎを愛でる時間も与えられなかった。 まさか自分がいじめの標的になるとは思っていなかった。きっとお父さんは自分の子が酷い目にあうなんて思わないし、あいつらもまさか自分達が加害者になるとは思っていなかったはずだ。きっとあいつらの親も自分の子が知らず知らずのうちに糞ガキへ成長しているとは思っていないはずだ。 ほんの些細なことからいじめは始まった。ついこの間、体調が悪くて授業中に吐いてしまったのだ。昼に食べた、消化しきれていない給食が机や床を汚した。トイレに駆け込む間もなかったからみんなの前で醜態をさらした。気になる男の子にももちろん見られた。早退してお父さんに近所の胃腸クリニックに連れて行ってもらって急性胃腸炎の診断を受けて、処方された薬を飲んだらすっかり良くなった。
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