魔法使いと2人の少女

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でも、こんな辛い思いをするんならあのまま良くならなきゃ良かったと、後悔した。 回復して学校に行ったら自分の机の上に消毒液と汚い雑巾が置いてあった。その下にノートの切れ端を破ったような紙があって、「ゲロ」とか「臭い」とか書かれていた。 「よぉ、青葉(あおば)。お腹の調子はいかが?」 吐いた時、心配もせず近くで大笑いしていたクラスメイトの男子3人がにやにやしながらやって来た。他の人達は声をかけて止めに入るどころか見て見ぬふりをしていた。私には友達と呼べる人がいなくなった。そう呼んでいた人達はよそよそしくなって話をしてくれなくなった。話したら自分もいじめられるからだ。 いじめというのは、少しのきっかけから始まるものなんだと、身をもって知った。 それでも最初は無視できる余裕があった。相手にしなければあいつらも飽きてそのうちやめるだろうと思っていた。そうすればまた普通の日常が戻る。中学2年という何もかもか不安定な時期だから、みんな刺激を求めてるのだ。気持ちはわからなくもなかった。でもあいつらはろくな大人にはならないだろう。 嫌がらせに反応しないことであいつらはイライラして、いじめはおさまるどころか逆にエスカレートした。私の体にGPSが埋め込まれているのか、どこに隠れてもあいつらに居場所を突き止められては、人目を避けた場所に無理やり連れていかれ嫌がらせを受けた。 校舎内を逃げ回る毎日。庇ってくれる人はいなかった。あいつらは3人がかりで私を捕まえて、誰もいない時間帯を狙っては体育館倉庫に連れ込む。そして、給食に出た紙パックの牛乳を何日も溜め込んで、わざと賞味期限を切らせて腐った牛乳を頭からぶっかけてくる。 「くせぇ、くせぇ! お前のゲロといい勝負だな!」 目や鼻に牛乳が入って咳込んだ。抵抗してみたものの、2人が両脇から体を押さえつけるせいで身動きが取れない。 「なんふぇ、こんなこふぉ、ふるの!」 咳き込みながら「何でこんなことするの!」と言うと、あいつらは一瞬真顔になってから腹を抱えて笑いだした。 「おいおい、なんて言ったんだよ! ばい菌だから人間の言葉が喋れないのか? お前には前からムカついてたんだよ、優等生ぶりやがって!」 「俺らを見下してたんだろ? ばい菌の癖にクラスで1番頭が良いなんて気持ち悪い」 「頭の中が腐ればいいのに」 お父さんに褒められたい、お父さんを楽させるために将来ちゃんとした仕事に就きたいと真面目に勉強を頑張るのは、あいつらにとって癪に障ることだったらしい。 それからはまたばい菌として扱われ、倉庫のロッカーにしまわれたモップや箒で叩かれて、ちりとりで集められた綿埃をかけられて放置された。もう自分の体が臭くて臭くて吐きそうになる。
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