魔法使いと2人の少女

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ついに苛立ちは頂点に達した。名前も知らない、今会ったばかりの人に心を覗かれるのが嫌だった。いじめを知ったところでどうせ解決しない。彼が何かをしてくれるわけでもない。 怖いのは、お父さんにいじめのことが知られてしまうことだ。お母さんが死んだ時みたいな悲しい顔はもう、二度と見たくない。 急に視界がぼやけた。目を擦ると手の甲が濡れた。少し温かいそれは涙だった。次から次へとぽろぽろ出てくる。初めて、自分が泣いていることに気づいた。 突然目の前で泣かれた彼は慌てふためく。私がもっと幼かったら、頭を撫でたり子守唄をうたったりすれば簡単に泣き止んでいたはずなのに。どう宥めればいいのかわからない彼を困らせている。 こんなの、ただの八つ当たりなのに。 「気に障ったならごめんなさい、ただ心配だっただけなんです。なんだか君からは痛みと悲しみと怒りが伝わってくるんです。もし良ければ話してください。話しにくかったら独り言でも構いません。僕は静かに寝てますから」 そう言って彼は腕を組んで俯いて寝始めた。正確には寝たふりをしている。なるほど、これで私が喋れば独り言が成立する。
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